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わたしたちは、つねに音へと遅れている。
音はわたしたちの聴こえの影である。
音像(イメージ)はつねに、遅れて到来する。
この作品は、耳(聴取)と指(演奏する身体)と目(読譜)との 
錯綜する様を捉えたドキュメンタリーである。
including :
 

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(for Voice and Prepared Piano)
 

「詩」Poem

(for Mezzo Soprano and Piano / lyrics by Shuntaro Tanikawa)
 

メライトロイ

(for Piano)
 

Performance Studies

(for Piano)

 
 

all tracks composed and performed by Midori Kubota

 

2017年1月6日および2019年6月22日·23日にかけて、私の作品のいくつかが演奏された。
本CDに収められた音源は、そのドキュメンタリーである。

2011年、私は《SCORES》と名付けられたソロ·パフォーマンスを行った。図形楽譜(モートン·フェルドマン、ジェームズ·テネイ)の作品や、通常の仕方とは違う様々な読譜方法による作品(足立智美、北條知子への委嘱作品)を集め、さらには2時間に渡る公演それ自体がひとつの作品となるような構成であった。
 
その時自作新作として初演したのが、ソロピアノによる《Performance Studies》シリーズである。任意の楽譜を様々なインストラクション———楽譜を上下逆さまに演奏する、特定のパートのみ1小節遅れて演奏する、右手と左手を異なる方向へと同時に読譜して演奏する、など———に従って演奏する、一種のパフォーマンス作品である。
 
そうして読譜行為と演奏行為とが一旦解体され、それらが再びつなぎ合わされるそのあわいに生まれる音は、楽譜を「普通に」読みながら演奏する音とはまるで異なっている。楽譜全体から想像される音のイメージを事前に入念に乗せた音ではなく、瞬間ごとになされる読譜行為との格闘や、次の音を待っている佇まいや、迷いや、思考停止となった空虚感を結果として孕んでしまう。
 
この《Performance Studies》シリーズを、初演より8年経ったある日、録音しようと思い立った。それらすべてを改めて録音によって記録し、きき返した時、自分が想像していたよりも様々な種類の音が、存在感を持って仔細にきこえてくると思われた。そして、これは「音楽作品」というよりも「音楽行為のドキュメンタリー」ではないか、と思った。
 
長い時を経て、過去の自作が持っていた意味を、ようやく現在の自分が発見したのである。
 

久保田翠

2020.02.01 on sale
later / Midori Kubota
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